宮城県仙台市の総合病院 独立行政法人労働者健康安全機構 東北ろうさい病院(とうほくろうさいびょういん)

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膵癌(通常型膵管癌)

どんなところにできる癌ですか?

膵癌取扱い規約第7版(2016年)より
膵癌取扱い規約第7版(2016年)より

膵臓は胃の後ろで背骨や大動脈の前に位置し、左右に長く右側に十二指腸、左端に脾臓があります。右図のとおり三分して十二指腸側から膵頭部、膵体部、膵尾部といいます。

上腹部で深い位置にある臓器で、膵頭部~膵体部には門脈、総肝動脈、上腸間膜動脈とその分枝が複雑に交通しており、早期診断・手術を難しいものにしています。

どんな症状が出ますか?

腹痛、食欲不振、腹満感、体重減少、背部痛などがありますが、他の腹部臓器疾患でも同様の症状があり、早期であればなおさら特異的な症状はありません。しかしながら膵頭部の癌であれば黄疸の出現、また糖尿病の新規発症や糖尿病患者さんで急に血糖コントロールが悪くなった・・・などは気をつけるべき症状と考えます。

また、糖尿病、肥満、喫煙、慢性膵炎などは疫学調査から明らかに膵癌の発癌リスクを高めていることがわかっています。

ほかの癌と比べてどんな特徴がありますか?

国立がんセンターの最新のがん統計(2016年)によりますと、膵臓癌の罹患者数(2012年)は男性18076人、女性16726人、死亡者数(2015年)は男性16186人、女性15680人とあります。男性では肺癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌についで5番目、女性では大腸癌、肺癌、胃癌、膵癌、乳癌の順でした。

年度が違うので正確な評価はできませんが他の癌腫に比べ※1死亡者数の割合が多く、膵癌の悪性度の高さ、治療抵抗性がうかがえます。 そして同じく2018年に公表されました2006-2007年診断の癌患者さんの5年相対生存率をみますと、膵癌は男性7.9%、女性7.5%で調査された22種の癌の中で、男女とも最も低い生存率でした。

膵癌は進行が速いため進行癌として見つかるケースが多く、また周囲に拡がっていこうとする性格が強く、特に温存すべき重要血管周囲の神経叢に浸潤性が強いため、根治的手術を行っても必ずしも生存率が芳しくない原因となっています。 画像診断の進歩から従来発見されにくかった膵癌も小さい早期の段階で発見できる可能性があります。2012年の全国膵癌登録のデータでは1cm以下の小膵癌の5年生存率は80.4%とあります。

※1男性胃癌の死亡者数/罹患者数は30809人/91006人、同じく肺癌は53208人/76913人、ちなみに女性乳癌では死亡者数/罹患者数は13584人/73997人

治療法は?

癌の治療は切除が一番・・・とならないのが膵癌の難しいところです。かつてリンパ節、神経叢も含めて大きく切除する拡大郭清手術が行われてきましたが、2000年代はじめ海外から大きくとらない標準切除でも差がないとの報告が相次ぎました。日本人の丁寧な手術なら違うだろうと、本邦でも厳格な前向き比較試験が行われましたが拡大郭清手術と標準切除に差はありませんでした。

温存すべき重要血管周囲の神経叢に浸潤性が強いのが膵癌の特徴です。血管が巻き込まれていたりした場合は局所進行癌として切除は勧められなくなりました。詳細なCT画像診断が可能になりこの血管周囲神経叢の浸潤程度を評価するようになり、切除可能なもの(R)、切除可能境界にあるもの(BR)、切除不能なもの(UR)※2と分けて治療方針を考えるようになりました。

※22016年膵癌取り扱い規約第7版、切除可能性分類 R: Resectable, BR: Borderline resectable, UR: unresectable

手術術式

膵癌手術 膵頭十二指腸切除の症例(切除後の写真)
膵癌手術
膵頭十二指腸切除の症例(切除後の写真)

手術術式は大きく2種類です。膵頭部の癌に対しては膵頭十二指腸切除、膵体部・尾部の癌に対しては膵体尾部切除を行います。膵頭十二指腸切除は膵頭部に加え十二指腸、胆管、胆嚢、胃の一部を切除し3か所の消化管吻合再建※3が必要ですが、膵体尾部切除には再建はなく切除のみで終了します。

※3なかでも膵臓と小腸(空腸)とを吻合する膵空腸吻合による合併症をいかに防ぐかが重要です。

化学療法(抗がん剤治療)と新たな治療戦略

現在一般的に用いられている薬剤は、ゲムシタビン(ジェムザール®)、S1(ティーエスワン®)、ナブパクリタキセル(アブラキサン®)などがあります。従来の抗がん剤では効果のなかった膵癌でしたが、2001年にゲムシタビンが登場してから様変わりしました。そしてナブパクリタキセルとゲムシタビンを組み合わせた化学療法がゲムシタビン単独よりも効果があることがわかり、2014年に保険収載されるや現在の標準的な治療法となりました。またFOLFIRINOXという化学療法※4も行われるようになりました。 化学療法は切除ができない症例に行われていますが、最近では切除可能(R)、切除可能境界(BR)症例において術前化学療法の効果が認められるようになり、今後は手術を行う前に化学療法行うという治療戦略※5がとられるようになると考えられます。またがんセンターなどの限られた施設での臨床試験段階ですが、免疫チェックポイント阻害剤の研究もおこなわれています。

※4オキサリプラチン、イリノテカン、5-FU(フルオロウラシル)、レボホリナートを組み合わせた化学療法。遠隔転移を有した膵癌に対してゲムシタビン単独よりも効果があることが証明されたが、毒性が強いため日本では一部の薬剤を減量したm FOLFIRINOXが行われている。
※5東北大学が代表を務める膵癌術前治療研究会が行った前向き比較試験にて明らかになり、これに基づき2019年膵癌診療ガイドラインが改訂予定です。

放射線療法

局所進行の切除不能(UR)症例が対象となりますが、化学療法との併用において※6多少の効果があることがわかっています。しかしながら切除可能境界(BR)症例については、最近術前化学療法を行って手術をする場合と、術前に化学療法+放射線療法を行って手術をする場合とを比較する臨床試験が行われましたが、両者には差がなく放射線の効果はありませんでした。

※6フルオロウラシル、S1、ゲムシタビン単剤にて。

最後に

近年膵癌の治療戦略が大きく変わろうとしています。膵癌の手術は経験豊富な専門医のいる施設での手術が勧められます。また化学療法が治療において重要となってきました。当院では日本肝胆膵外科学会高度技能指導医、抗がん剤治療の専門医が在籍するがん診療連携拠点病院であり、安心して診療を受けられる体制となっています。

膵癌についての診察は、

消化器外科外来(月・火・金曜日 担当 成島陽一、武藤満完)

にお願いします。紹介状をご持参のうえ来院して頂ければ、迅速に対応可能です(地域医療連携室022-275-1467での予約も可能です)。

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