宮城県仙台市の総合病院 独立行政法人労働者健康安全機構 東北労災病院(とうほくろうさいびょういん)

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胆道癌(胆管癌・胆のう癌)

どんなところにできる癌ですか?

胆道とは胆汁※1の流れ路です。肝臓から分泌された胆汁は、胆管という直径5-6mm大の管の器官をとおり、十二指腸に流れていきます。胆管の途中には胆汁を一時的にためておく袋状の器官、胆のうがあります。この胆管と胆のう、二つの器官をまとめて一般に胆道と呼んでいます。胆管から発生した癌を胆管癌、胆のうから発生した癌を胆のう癌といいます。したがって胆道癌とはこのふたつの癌をまとめていう場合の総称です。

胆管は肝臓の中では肝内胆管※2、肝臓の外で胆嚢と合流するまでを肝門部領域胆管、それより下流十二指腸側を遠位胆管といいます。

※1 肝臓から分泌される茶褐色の液体。腸内で食べ物の消化を助ける働きがあり、多くは腸より再吸収されるが、一部は便として排泄される。大便の色のもとはこの胆汁です。
※2 肝内胆管から発生した癌を肝内胆管癌といいますが、癌としては肝臓癌のひとつとして取り扱われ、一般に胆道癌には含まれません。

どんな症状が出ますか?

胆管に癌ができると胆汁の流れが滞り、黄疸が現れます。眼球結膜(しろ目)が黄色くなったり、尿が濃い黄色になって気づかれます。胆道の閉塞によるものなので閉塞性黄疸といい胆道癌の最も多い症状です。血液検査で肝機能異常をきっかけに発見されることもあります※3 。胆のう癌は早期ではほとんどが無症状で、腹部超音波検査で偶然そして容易に発見できる一方で、黄疸などの症状がある場合は進行していることが多いです。

※3胆管癌の場合ごく小さな早期の腫瘍であっても黄疸が現れることがあります。癌の進行度と黄疸は必ずしも一致しません。

ほかの癌と比べてどんな特徴がありますか?

国立がんセンターの最新のがん統計(2014年)によりますと、一生のうちに癌にかかる可能性(生涯罹患率)は男性で62%、女性で47%と、文字通り二人にひとりは癌にかかります。胆管癌・胆のう癌あわせた胆道癌の罹患者数は男性11641人、女性10699人(罹患率は男女とも63-4人にひとりの割合)でした。これは男性ですと肺癌・大腸癌の1/7、胃癌の1/8の患者数、女性ですと乳癌の1/7、大腸癌の1/8ほどの患者数です。

胆道癌は膵癌に次いで治療成績の悪い癌です。同じく2018年に公表されました2006-2007年診断の癌患者さんの5年相対生存率をみますと、胆道癌は男性23.9%、女性21.1%で調査した22種の癌の中で、男女とも膵癌に次いで2番目に低い生存率でした。

胆道癌も膵癌と似て、癌は周囲に拡がっていこうとする性格が強く、また診断が遅れたり、進行して見つかるケースがあり、根治的手術ができなかったり、抗がん剤が効かない症例があるなどが生存率の低い理由です。

肝門部胆管癌

肝門部胆管癌

遠位胆管癌

遠位胆管癌

治療法は?

手術

現在のところ根治的治療は手術と考えられています※4。胆道は肝臓から、膵・十二指腸にかけて存在しているため、癌の発生部位によって手術術式が異なります。肝門部領域胆管癌:胆のうとともに胆管を切除しますが、肝臓が近いため完全な切除のためには通常肝臓の右半分を併せて切除する必要があります。

遠位胆管癌:遠位胆管は一部が膵臓の中を通って十二指腸とつながっているため、胆管・胆のうのほかに、膵頭部(膵臓の十二指腸側1/3)と十二指腸、胃の一部を切除する膵頭十二指腸切除術※5を行います。

胆のう癌: 胆石症などでは腹腔鏡下胆のう摘出術が行われますが、胆のう癌と診断または疑われる症例では腹腔鏡下手術ではなく開腹手術となります。胆汁を漏らさないように肝臓を含めた周囲組織をひと塊として切除する必要があるからです。また癌の拡がりによっては肝門部領域胆管癌のように大きな肝切除や膵頭十二指腸切除術を必要とすることもあります。

胆のう癌手術 肝切除と膵頭十二指腸切除を併せて行った症例(切除後の写真)
胆のう癌手術
肝切除と膵頭十二指腸切除を
併せて行った症例(切除後の写真)

黄疸がある場合や胆管炎を併発している場合などは術前に溜まっている胆汁を一時的に体外に逃がす処置を行うことがあります※6。肝切除を伴う場合は十分に黄疸がとれていなければ手術ができません。

胆道癌の手術は、肝臓あるいは膵臓を同時に切除する可能性がありますので、経験豊富な専門医のいる施設での手術が勧められます。当院では日本肝胆膵外科学会高度技能指導医、日本胆道学会認定指導医が在籍しており、安心して診療を受けられる体制となっています。

※4肉眼的に癌の遺残がなく十分な切除が可能な症例に限ります。周囲のリンパ節、神経叢も併せて切除します。
※5
この術式は遠位胆管癌だけでなく、膵頭部癌、十二指腸乳頭部癌などにも適用されます。
※6黄疸を取り除くことを減黄といい、そのための処置を胆道ドレナージといいます。胆道ドレナージには体外から穿刺して胆管に管を挿入する方法と、内視鏡的に十二指腸の胆管の開口孔(十二指腸乳頭部)から管を入れる方法があります。

化学療法(抗がん剤治療)

化学療法は切除ができない症例に行われていますが、根治的な手術のあとに行われることもあります(補助化学療法)。現在一般的に用いられている薬剤は、ゲムシタビン(ジェムザール®)、S1(ティーエスワン®)、シスプラチンなどがあります。胃癌、大腸癌に比べ保険適応となっている薬剤は少なく、今後の研究・開発が期待されます。以下にそれぞれの使用方法を説明します。

  • ゲムシタビン :点滴で用います。週一回投与で3週投与1週休みを1サイクルとし4週間毎繰り返します。
  • S1 :飲み薬です。4週間内服、2週間休みの6週間毎を繰り返します。
  • ゲムシタビン+シスプラチン併用療法(GC療法): 点滴で2剤を一日で投与します。2週投与1週休みを1サイクルとし3週間毎を繰り返します。

放射線療法

胆道癌に対する放射線療法は、はっきりとした治療効果を示したデータはありませんが、切除できない場合、化学療法の効果を上げたいときなどに用いられることがあります。

おしらせ

当院では日本胆道学会と東北大学が行っている全国60以上の施設が参加している、胆のう癌の診断と治療方針、予後に関する多施設共同研究を行っています。詳細は当院の臨床研究公開文書を参照ください。

臨床研究公開文書はこちら

胆道癌、閉塞性黄疸についての診察

消化器外科外来 (担当 成島陽一、野村良平)

にお願いします。紹介状をご持参のうえ来院して頂ければ、迅速に対応可能です(地域医療連携室022-275-1467での予約も可能です)。

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