宮城県仙台市の総合病院 独立行政法人労働者健康安全機構 東北労災病院(とうほくろうさいびょういん)

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総胆管結石、総胆管結石腹腔鏡下手術

総胆管結石症

治療が必要になります。 開腹手術、内視鏡的乳頭切開術、内視鏡的乳頭拡張術で総胆管の石を取ることがあります。

私たちは、腹腔鏡下手術を総胆管結石にも応用し胆嚢摘出術と同様に非常によい成績を出しています(腹腔鏡下総胆管切石術) 胆嚢総胆管両方の胆石が一気に治療されるため、入院期間の短縮になり、7日以内の退院が可能です。 当院では年間40例ぐらいの手術をしています。

メリット:1回の手術で胆嚢総胆管結石を根治できること、手術後の早期回復が得られ、十二指腸乳頭部を温存できること 何故、乳頭を温存すべきなのか?

はじめに

腹腔鏡下胆管結石手術(LCBDE)の利点は腹腔鏡下胆摘との一期的治療と乳頭機能温存である。

適応

当院では内科・外科症例ともに耐術可能例は原則LCBDE。術式は経胆嚢管法と胆管切開法。胆石起因の胆管炎、膵炎はENBD留置後LCBDEを行う。

手術手技

経胆嚢管法は結石が4個以下,8mm以下が適応でそれ以外は胆管切開法とする。

  1. Calot三角を展開し、胆嚢管周囲を十分に剥離しcritical view of safetyをつくる。胆嚢管は1cm以上剥離し直線化する
  2. 胆嚢管に造影チューブを挿入し術中胆道造影を行い術式を最終決定する。
  3. 経胆嚢管法では拡張バルーンで胆嚢管を拡張し、胆管切開法では肝十二指腸間膜前面の脂肪識を切除し胆管を縦切開し、切石ルートを作成する。
  4. 切石は胆道鏡下に行う。流水で排石できないものはバスケットで切石する。困難例はEHLを使用する。
  5. 胆管切開法で,完全切石例はCチュ ーブ、少しでも遺残が疑われる例はTチューブを留置する。

手術成績

1991年~2015年12月までにLCBDEを672例に適応され660例(98.2%)に完遂した。平均手術時間は 61分であった。術前胆道ドレナージ留置例は45例あった。

初期偶発症として重篤ものはのはなく死亡例もなかった。遺残結石は12例(1.8%)であった。

長期成績

再発結石は12例(1.8%)のみで全例初回、再発時とも原発結石で落下結石の再発率は0%であった。

再発のない胆管炎,肝膿瘍などの胆道系合併症はなかった。原発結石に限っても再発率は4.7%と低く、乳頭機能を温存する意義が示唆された。

再発、遺残例は可能な限り再LCBDE(胆管切開法)を適応とし、これまで6例に可能であった。

役割分担

当院では1991年以降LCBDEを行い医療圏では周知され患者が紹介されていると考えている。また受診科にかかわらず、治療の第一選択をLCBDEとしている。

まとめ

LCBDEは遺残結石が少なく精度の高い手術であり、安全に施行された。また、長期予後の検討では再発結石は少なく、胆道系合併症もなく、乳頭機能を温存する意義が 示唆された。

総胆管結石症に対する腹腔鏡下手術

総胆管結石への腹腔鏡下手術は、当科では早くから本手術を施行し優れた結果を収め患者さんの健康に寄与しています。600名を越える方々に手術を行いました。

しかし一般には、多くの外科医が胆管結石治療を内視鏡下乳頭切開術(EST)に委ねたことや、手術が困難で煩雑であるため世界的にも定着していません。しかしその利点は多く、十二指腸乳頭機能の温存、胆嚢・胆管結石の治療が一回の手技で同時に完結できること、創が小さく低侵襲性で早期退院・早期社会復帰が可能になります。現時点では胆管結石に対する最も正当性が高い治療で今後普及することが望まれます。

手術適応は原則的に初回手術の胆管結石症で、全身麻酔が可能な患者さんです。そのアプローチ法には経胆嚢管法と胆管切開の2つの方法があります。経胆嚢管法は胆管を無傷で切石することから胆管結石治療で第一に考えるべき方法で利点が多い。しかし、胆嚢管を使用するという制約からその選択には石の数、大きさ、位置や胆道の解剖を考慮しなければなりません。

私たちの経験では、胆管結石350例中150例に経胆嚢管法を完遂しました。経胆嚢管法には器具の整備が重要で繊細な手技が要求されます。一方、胆管切開は総胆管拡張例では困難なことは少なく、ほぼ全例に成功しています。結石が多数のときは除石に工夫が必要でありました。胆管拡張が乏しいときは剥離しにくく切開も難しくなり、縫合による狭窄の危険性も高くなります。

胆管径が8mm以下の非拡張例では経胆嚢管法ができないときは胆管切開以外の方法に委ねた方がよいと考えます。また、胆管切開後の胆管ドレナージは注意深い選択が大事で、結石少数例で完全切石が確信できるときは一期的縫合かCチューブドレナージにします。一期的縫合とCチューブドレナージの区別は、ビ石例、胆管内に胆泥や粘液が残存する症例ではCチューブを基本的に追加します。結石多数など切石が不確実で遺残が危惧されるときは術後切石ルートが確保できるTチューブが安全です。

自著論文
徳村 弘実、梅澤 昭子、松代 隆:腹腔鏡下胆管切石術の手技-経胆嚢管法と胆管切開.消化器外科20:1615-1621,1997
徳村 弘実、鹿郷 昌之、深瀬 耕二、ほか:経胆嚢管法による腹腔鏡下胆管切石術。外科治療86:244-248、2002
徳村 弘実、鹿郷 昌之、原田 伸彦、ほか:腹腔鏡下胆管切石術の現況と問題点:臨外57:1377-1382,2002
徳村 弘実、梅澤 昭子、安田 篤、ほか:腹腔鏡下胆管切開切石術の一期的縫合:日鏡外会誌3:380-384:1998
徳村 弘実、梅澤 昭子、今岡 洋一、大内 明夫、山本 協二、松代 隆:腹腔鏡下胆管切石術の手技と手術成績:胆道10巻5号360~368,1996
徳村 弘実、松代 隆:総胆管結石症の腹腔鏡下手術:手術48;761-767、1994
徳村 弘実、鹿郷 昌之、原田 伸彦、ほか:総胆管結石症に対する腹腔鏡下胆管切開術。消化器外科26:131-141,2003
徳村 弘実、鹿郷 昌之、柿田 徹也、ほか: 腹腔鏡下胆管切石術:臨床外科第60巻(6);681-985,2005

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