宮城県仙台市の総合病院 独立行政法人労働者健康安全機構 東北労災病院(とうほくろうさいびょういん)

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急性胆嚢炎

急性胆嚢炎

急性胆嚢炎は、なぜ起きるか?

原因の90%は、胆のうの中の胆石が胆嚢の出口に詰まることから発症します。他に、別な病気の治療中に発症することがあり、体の状態が悪いことが原因となります。

胆嚢の中にある胆汁に細菌がいると、胆嚢は浮腫んで大きく腫れ胆嚢炎を起こすわけです。初期は、浮腫んでいるだけです。次第に著明に腫れ上がり、胆嚢の壁が肥厚し、腐り始めます。それが壊疽性胆嚢炎と言われる状態です。 それまでに上腹部痛が強くなり、発熱、悪心などの症状が出現します。

ときどき腹膜炎や敗血症を合併し重篤になることがあります。治療は、はやく診断してもらい、早期治療を受けることです。多くの方は、簡単な内科治療をしながら、早期に手術をすることで治癒が得られることが多いです。しかし、診断が遅れ病態が遅延すると手術が難しくなることがあります。

腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)を困難にする最大の原因です。急性胆嚢炎はLC例の約7%の合併をみます。開腹移行する率高率であることが、報告されています。

しかし、われわれは、手術可能であれば発症後早ければ早いほど良い、という結論から、急性胆嚢炎に対する腹腔鏡下手術を実施してよい成績を収めています。

いつでもご連絡下さい。

したがって手術成績の向上を目指し手術時期やPTGBDの併用効果の検討されています。自験例では、1週間以内の早期手術例は出血が多いが剥離が比較的容易であった。

とくに1-2日しか経過していない症例は手術はむしろ容易であった。しかし時間経過とともに易出血性となり胆嚢への大網癒着が強くなる傾向がみられた。とくに発症5日以上の経過例で手術は困難を極めた。急性期を保存的に軽快し2週間以上経過した待機手術例では、炎症軽度例と進行例が混在していた。

前者は臨床的に炎症所見が軽度で手術はさほど困難でなく、炎症が速やかに消褪したものです。これに対し後者は重症の急性化膿性の病態が遷延したため手術困難になったと考えられ、壊疽性胆嚢炎と胆嚢膿腫が多く壁肥厚も強かった。

また強固な癒着がありCalot三角の処理が難しく胆嚢床の剥離困難が多くみられた。実際に胆管損傷と開腹移行が最も多かった。一方、PTGBDを置き待機的にLCを施行した例では急性胆嚢炎による易出血性、線維化や癒着を軽減する働きがあると推察された。ただしPTGBDそのものに起因した合併症も少なからずみられました。

筆者らは急性急性胆嚢炎治療方針を以下のように定めています(下記表)。発症後3日以内は早期手術を腹腔鏡下に行うこととし、非常に良好な結果を得ています。

術者の経験豊富であれば5日でもかまいません。3日を越え炎症が続いているものや耐術性が不良なものはPTGBDをおきます。PTGBD留置後のLCの時期は1,2週間後にしています。

また、術前の手術難易度予測は重要で、白血球数、CRP値、患者の一般状態そして画像所見からある程度読み取ることができます。

論文
【胆道炎・胆道癌診療ガイドラインを検証する】
胆道炎ガイドラインの注目点 急性胆嚢炎に対する早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術は推奨されるか 実地臨床と診療ガイドラインからみて:徳村 弘実、松村 直樹、安本 明浩、ほか:肝・胆・膵 58:49-56,2009
消化器(肝・胆・膵) 紹介 胆石症・急性胆嚢炎:徳村 弘実: 治療 92:940-94、2010
急性胆嚢炎に対する経皮経肝胆嚢ドレナージ施行後の腹腔鏡下胆嚢摘出術の検討(原著):
徳村 弘実ほか: 日本内視鏡外科学会雑誌 11:381-387、2006
徳村 弘実、鹿郷 昌之、原田 信彦、ほか:
急性胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術-早期手術、待機手術とPTGBDの比較-:消化器内視鏡14:1064-1069、2002
徳村 弘実、鹿郷 昌之、原田 伸彦、ほか:
胆嚢結石症における開腹胆嚢摘出術の適応:胆と膵Vol.24(8);577-581、2003

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