単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術
胆石に対する、創のない新しい内視鏡手術
細径内視鏡を使用し、患者さんの臍の傷だけから胆嚢を切除する新しい手術を開始いたしました。 痛みや瘢痕(はんこん)の軽減、回復にかかる時間の短縮につながるものとして期待されています。 SILS(single incision laparoscopic surgery)と呼ばれています。
当院での18年の低侵襲性の内視鏡(腹腔鏡)外科手術の経験と進歩に基づいて、この手技を導入。 皮膚切開がほとんどなく、さらに入院期間が短く、傷の痛みがほとんどない、さらなる低侵襲の手術が可能となりました。
一部適応が限定されますので、当院外科外来にご相談下さい。
単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術の経験
労働者健康福祉機構 東北労災病院外科 徳村弘実、松村直樹、福山尚治、安本明浩、武者宏昭 2009.7大阪SIES勉強会
目的
単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術(SILC)の10例の経験を報告する。
対象
男:女2:8、55.6歳ですべて急性胆嚢炎の既往のないDIC胆嚢陽性であった。上腹部手術既往例はない。
方法
臍部を縦切開し頭側左右に2本5mmポート、尾側に腹腔鏡用長5mmポートを留置。
鉗子は左手把持用にロテキュレーターを使用。右季肋部にミニループレトラクターを留置し底部を把持挙上した。 造影は底部に14ゲージ穿刺針でX線透視下に行った。
結語
単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術(SILC)の10例の経験を報告する。
目的
平均手術時間は101分。術後在院は3.5日。造影は6例に試行し穿刺針の不具合例を除き5例で造影可能であった。 合併症は臍部軽度感染が1例あった。
まとめ
胆嚢陽性例など非炎症例に適応を限定すれば完遂はさほど困難でなく、従来法に比べSILCは手術時間の延長も軽度と推察された。術後回復も若干良いように思われた。
しかし、鉗子操作の制限など手技の慣れと鉗子の改良は必要である。合併症の防止には、現段階では、技術認定医相当の熟練者が慎重にすべき手技と考えられた。