宮城県仙台市の総合病院 独立行政法人労働者健康安全機構 東北労災病院(とうほくろうさいびょういん)

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炎症性腸疾患(IBD)センター

センターの特色

炎症性腸疾患(IBD)とは潰瘍性大腸炎とクローン病のことで、大腸や小腸など下部消化管に潰瘍ができる原因不明の難病です。患者数は近年増加の一途をたどっており、本邦での難病対策事業登録患者数は潰瘍性大腸炎が15万人を超え、クローン病が5万人に達そうとしています。

これらはいずれも10代から20代の若年者に好発することが知られており、学業、就職、結婚、出産など人生の重要なイベントの時期と重なるため、適切な治療により早期の社会復帰を図ることが大変重要です。また最近では中高年者のIBD患者数も増加しており、特に高齢者では全身状態の悪化を招きやすいことが問題となっています。

根治が難しい両疾患ですが、最近になって抗TNFα-抗体製剤などの有効性の高い治療薬が次々と登場し、粘膜治癒すなわち潰瘍の完全治癒が高い頻度で可能となってきました。一方でこうした新規薬剤でも効果の薄い方や、当初有効でも治療途中で効果が薄くなる二次無効の方もいらっしゃいます。さらに狭窄(腸が狭くなること)や膿瘍(膿がたまること)など薬剤治療の効果が期待しにくい合併症が起こる方もいらっしゃいます。

こうした患者さんの治療では、治療薬の追加や変更など適切な内科治療戦略の決定が重要ですが、時には手術を適確なタイミングで選択することも重要です。また特にクローン病では手術後の再発が多いため、予防のために内科での適切な薬剤や栄養療法による寛解維持治療(再発を抑える治療)が大変重要となります。

当院には現在、胃腸内科に2名、大腸肛門外科に2名、計4名のIBD専門家が所属し、それぞれIBDの専門的な内科治療・外科治療を行っております。IBDの治療においては内科治療と外科治療がスムーズに移行できることが極めて重要であることから、内科と外科の連携をさらに緊密にするために、以上の4名を主要な構成メンバーとしてIBDセンターを設立しました。宮城県内のみならず東北のIBD患者さんが、当院において全国レベルの最新のIBD治療を受けられるよう、日々研鑽に努めながら診療にあたっています。

診療内容

当院では、年間あたり潰瘍性大腸炎患者約50名、クローン病患者約50名、あわせて100名程度のIBD患者を新規に受け入れ、診療にあたっています。IBDの診療においてはまず正確な病変の評価が重要であり、大腸内視鏡検査や小腸内視鏡検査、小腸造影検査に加え、CTエンテログラフィーなどの各種画像検査を行っています。近々カプセル内視鏡も導入予定です。

治療においては、5-アミノサリチル酸製剤やステロイドなどの基本薬からアザチオプリン/6-MPやタクロリムスといった免疫調節薬、さらにインフリキシマブやアダリムマブ、ゴリムマブやウステキヌマブなどの分子標的薬に至るまで、患者さんの病態に応じて種々の薬剤を適切に使い分けています。また当院では白血球除去療法(LCAP)や顆粒球除去療法(GMA)といった血球成分除去療法も行っています。

病気の活動性の強い患者さんでは入院での治療を行っていますが、こうした方では栄養障害を来している場合が多いので、栄養サポートチーム(NST)のアドバイスを得ながら完全静脈栄養療法やクローン病の方では経腸栄養療法(成分栄養療法)を行い、栄養状態の改善に努めています。

潰瘍性大腸炎では内科治療の効果のみられない重症例や、効果の不十分な難治例、あるいは大腸癌合併例で手術すなわち大腸全摘術が必要となります。回腸嚢肛門吻合により肛門機能を温存する手術が基本となります。またクローン病では狭窄や膿瘍を合併した場合に手術が必要となり、必要最小限の小腸切除術あるいは大腸切除術が行われます。栄養を吸収している小腸を出来るだけ多く残すために狭窄形成術という手術も行われます。

またクローン病の半分以上の方に合併するといわれている痔ろうの手術も行っています。当院では年間に潰瘍性大腸炎とクローン病それぞれ約30件ずつ、計60件のIBD手術を行っています。

診療体制

センター長
大腸肛門外科部長 高橋賢一
副センター長
胃腸内科部長 小島康弘
胃腸内科副部長 白木学
大腸肛門外科副部長 羽根田祥

お問い合わせ先

胃腸内科・外科
電話(022)275-1111(代)

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